院長のコラム
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在宅医療20
本年も2ヶ月足らずとなりました。インフルエンザ予防接種はお済みですか? 特に呼吸器疾患をお持ちの患者さんは禁忌でない限り、積極的な接種をお勧め致します。
インフルエンザに罹らないようにするには、体力をつけるのも大切です。体力は栄養に左右されます。栄養摂取は、点滴で直接静脈内に栄養を投与する方法と、経腸栄養の2つの方法があります。末梢の血管から輸液を入れる場合、何度も同じ場所の血管を使用すると静脈炎を引き起こしやすいという難点がありますが、食欲のない方にはカロリーは低くても、だるさが取れ体は楽になるものです。子どもの場合、ぐったりしていても点滴が終わる頃には元気に帰っていく場合もあります。
体液のバランスを保つのは大変重要なことです。高齢者の方は、脱水になりやすく、点滴は大切な治療の一環になります。
在宅医療19
秋になり、ご自宅で療養されている患者さんにとって、大敵は感冒です。特に呼吸器疾患をお持ちの方は、11月中にインフルエンザワクチンを接種してください。
感冒の流行と共に食欲も落ちてくると、点滴が重要な役割を果たします。高齢で痩せている患者さんの場合、血管がもろくてすぐ液漏れしてしまい、点滴に30分〜1時間費やすことがあります。肥満で血管が出にくい方も同じです。ただし、これを毎日行うのは、大変な労力と時間を費やします。そんな時は、皮下輸液という、以前に一時やっていた方法があります。これはお腹、胸部などの、体動にあまり影響のない場所に直接針を刺し、時間をかけ、ゆっくりと点滴をする方法です。一時的に皮膚の膨隆、痛み、冷感を訴えることもありますが、徐々に吸収され、脱水を補うことができ、便利な治療法です。
在宅医療18
夏は、健常な人でも暑さで食欲が落ちるもので、病気で長期臥床されている患者さんはなおさらです。この食欲不振というのはしばしば医者を悩ませるものです。若い方なら点滴をしてしばらくすると回復の兆しをみますが、ご高齢者は低蛋白血症から浮腫を生じやすく、感染しやすくなります。そうなると抗生剤の投与も必要となってきます。したがって、ご高齢者の食欲不振と聞くとドキッといたします。そんな時は経腸栄養剤という手もありますが、その前に患者さんの嗜好をたずね、お好きなものを食べていただくことにしています。しかも、時間に関係なく食べたい時に食べていただき、少量ずつ試みてもらっています。消化の良いものは、例えば、おかゆ、うどん、雑炊、豆腐はもちろんですが、プリン、ゼリー、アイスクリーム、カキ氷なども食欲低下の時はお勧めです。
在宅医療17
癌末期になると痛みが強くなり、次第に苦痛を伴い、不眠が生じることがあります。このような時は、躊躇せず麻薬を用いることが大切です。しかしながら我が国の麻薬消費量は、最も消費の多い米国の1/50、フランスや英国の1/7と、先進国の中でも極端に少なくなっています (癌緩和ケアガイドブック)。このことからも、十分な緩和ケア、すなわち癌の痛みやそれに伴う様々な症状が十分にコントロールされてないことがわかります。その理由の一つとして、日本では緩和ケアの専門機関が少ないことがあげられます。英国ではがん患者の70%以上が緩和ケアを利用しているのに対し、日本では10%以下に過ぎません。では希望の療養場所は、痛みを伴う癌末期の患者さんの場合、約60%が自宅です。一方、自宅で最期を迎えたい人という人は、10%にとどまるようです。
在宅医療16
褥瘡(じょくそう)は、寝たきり患者さんにしばしば遭遇する疾患です。できやすい場所は仙骨部ですが、背骨、足首など体重が加わるところならどこにできてもおかしくはありません。
治療法は、消毒した潰瘍部分の壊死組織を外科的処置で取り除き、皮膚組織を再生させる薬を塗り、ガーゼで覆い、肉芽組織を再生させるのが一般的です。一方、ラップ療法は傷を消毒せず抗菌剤も使わず、ガーゼの代わりにラップを貼っておくだけの治療です。ラップは100円ショップでも売っている食品包装用の薄い透明なフィルムです。
一般的にラップ療法が成功する為には全身状態の良い患者さんで、皮下脂肪の浅い方は不向きです。また、閉塞性動脈硬化症による踵の潰瘍には効果はありません。日常品を使うからといっても褥瘡の治療は必ず主治医の指示に従うことが重要です。
在宅医療14
在宅医療でしばしば遭遇する病気は、感染です。上部気道、下部尿路感染が一般的です。また、寝たきりの患者さんでは、褥瘡もよく見られます。一番知られている場所は仙骨部位ですが、時に背骨の突出部位や足の踵部分にも生じます。
そもそも、この褥瘡はどうしてできるのでしょうか? 私達は同じ姿勢を保っていると、その部位に痛みを感じるため姿勢を変えます。寝ている場合は無意識のうちに寝返りをします。すなわち同じ姿勢を続けていると、ある部分にだけ圧力が加わる結果、血流が途絶え細胞の壊死を引き起こします。これが褥瘡です。
この褥瘡は、部位によっては2時間程で形成されるといわれています。最初皮膚表面は赤みが生じ、次第にびらん、潰瘍へと進行します。したがって、初期の赤みを見逃さないことが重要になります。
在宅医療13
食欲不振になると点滴がすぐ頭に浮かびます。さらに終末期には食欲が低下する傾向があります。
癌終末期患者で輸液群と非輸液群に分けて、精神症状及びライフクオリティーの変化を調べた研究があります。それによると、「眠気、幻覚などの精神症状は輸液群で改善したが、倦怠感やライフクオリティーの評価には差がなかった」ということです。
聖隷三方原病院緩和支持治療科部長の森田達也医師によると「終末期は精神状態が変化しやすい為、気分をはっきりしたい患者さんには輸液すべし」と指摘しています。そして「1000ml以下に輸液を抑えることによって腹水、胸水、浮腫は悪化しない傾向にある」という論文を出しています。往診では、少量の点滴は拘束時間を考えると、患者さんはもちろん医療従事者にも助かります。まさしく諸刃の剣ですね。
在宅医療12
癌性疼痛は癌患者さんの日常生活を著しく低下させます。したがって、疼痛コントロールは質の高い生活維持のため大変重要な位置を占めます。その目標としては、まず睡眠が十分とれるか、一部の癌を除いて食事摂取が可能かどうか、入浴、外出可能かなどです。痛みは我慢しないことが大切です。特に、睡眠は健康維持のために重要です。睡眠不足ですと、頭がボーっとして物事に集中できません。また、免疫力も落ちて風邪をひきやすくなります。常に病床の患者さんはなおさらです。昼間はばたばたと騒がしく、生活音が聞こえるため安心して寝てしまうことも多い半面、夜間は刺激が全くか極端に減るため、むしろ頭がさえて不眠を訴えることがあります。よく病院でナースコールを頻回に鳴らす患者さんにもこのようなケースがあります。麻薬による除痛が大切になります。
在宅医療11
進行がん患者さんでは、約7割に疼痛が存在するといわれています。
WHOの三段階除痛ラダーに従うと、第一段階では非オピオイド系鎮痛薬すなわちアセトアミノフェンのような非ステロイド系鎮痛消炎剤、効果が得られない場合は、第二段階で弱オピオイド鎮痛剤が用いられます。代表的薬剤にリン酸コデインがあります。一般に咳止めとして広く使用されていますが、便秘傾向になる為、便秘薬を併用することもしばしばです。1日4〜6回と頻回投与の為、最近ではオキシコドンといわれるオピオイドも使用されています。以上の段階を経ても痛みが持続する時は、強い鎮痛効果のある強オピオイド鎮痛剤、いわゆるモルヒネを使用します。モルヒネは癌疼痛を激減させてくれます。経口摂取が不可能な場合は坐薬、経皮吸収も可能なパッチを使用することもあります。
在宅医療10
新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。
さて、在宅患者さんを往診して感じることは、ご家族の方の並々ならぬ努力に頭が下がるということです。特に末期がん患者さんは夜間も苦しくて眠れないことも多く、その都度家族は呼び起こされます。それが毎日続くのですから、体力的にも精神的にも参ってしまいます。時に不幸にも共倒れということもありえます。介護者が若い方でも、がん患者さんのケアは2〜3週間が限界ではないでしょうか? 主婦の場合は、食事の世話、買い物、掃除、子どもの面倒等々で、猫の手も借りたいくらいでしょう。
在宅医療は医者、看護師、薬剤師、ヘルパー等が互いに分散して患者さんを支えます。一人で抱え込むと大変ですので、ご自宅で最期を迎えさせてあげたいとお思いでしたら先ずはお電話下さい。
在宅医療9
早いもので残り1ヶ月で本年も終わりですね。さて往診の話ですが、寝たきりのご高齢の方は様々な病気をお持ちのため、経験を積まないとしばし苦慮する場面に遭遇します。特に専門外は頭を悩ませるため、情報集めは大切な治療の一環になります。往診の内容は、尿道カテーテル、気管内カテーテル、胃ろうチューブ交換、栄養管理と病院で日々行われていることをご自宅で施行します。
在宅医療のもう一つ大切な仕事が、がん患者さんや他の病で末期の方の最期の看取りです。この最期の看取りですが、医師が死亡確認しないとそれ以上事が進みません。「お葬式をすぐに出さなければ…」と動揺し心配されるお気持ちはわかりますが、それは無理なのです。したがって、死亡確認は医師の重要な仕事の一つになります。
それでは、来年もよろしくお願いいたします。
在宅医療8
在宅での寝たきり高齢者にとって、冬は油断できません。感冒、インフルエンザ等は、免疫力が低下している方には命取りにもなります。家族の方は積極的にインフルエンザワクチンを打ち、自宅にウイルスを持ち込まないようにしなければなりません。
ご家庭での対策として、まず外出したら必ず手洗いとうがいをして下さい。それから大切なのは、部屋を温め、乾燥を防ぐことです。窓際はカーテンだけでは寒く、特に北側の部屋で寝ている高齢者は、今から窓際から離れたところで看病されたほうがよろしいでしょう。
ワクチンは、65歳以上の人、呼吸器、循環器系、慢性腎疾患を有する人、老人施設入所者は積極的に打たねばなりません。もちろん私達医療従事者、老人施設の従業員、在宅看護に従事する方、またその同居家族等も例外ではありません。
在宅医療7
寝たきり老人、特に80歳以上の超高齢者の場合は感冒、脱水、わずかな水分過剰等でも変化をきたしやすいのが一つの特徴です。そのため早期発見が重要となってきます。すでに意識レベルが低下している場合でも呼吸回数、体温、脈数、尿量によってもその変化に気づくものです。顔色は良いか、笑顔が見られるか、触ってみて皮膚の状態の変化、特に下腿にむくみがあるかどうか、舌は乾燥していないか等、毎日観察するよう心掛ければ医療従事者でなくとも早期に異常を発見できます。時々、私が気がつかないような小さな変化を指摘されるご家族がいらっしゃいます。長くお世話をしているためでしょうか、いつもと様子がおかしいなどといわれ実際にそのとおりだったということもしばしばあります。まさに経験と勘があたることが多いのです。
在宅医療6
高齢者、特に寝たきりになると、一人の患者さんに様々な病気が存在していることが多いです。特に、長期臥床ともなると消化管疾患では食欲低下を引き起こしやすく、便秘はかなりの頻度に見られます。その上、嚥下運動も低下して食物がつまりやすくなります。そのため食事を控えたり流動食へ変更になり、低カロリーが続く結果しばしば低栄養状態に陥ります。低栄養状態は免疫状態が低下しやすく、感染、創傷遅延が生じます。このように変化が著しいのも寝たきり高齢者の特徴です。
脱水にも注意が必要です。暑い時はアイスノンを使用して体温が上昇しないよう注意し、こまめに冷水をのむことが大切です。また、利尿剤を使用中の患者さん、心不全、腎臓病で塩分制限中の患者さんは低ナトリウム血症に注意したいものです。続きは次号で話します。
在宅医療5
私たちは、口を介して食物を体内に取り込んでいます。仮に寝たきりになったとしても、点滴で栄養を取るより、腸管を介する栄養摂取方法がより生理的といえましょう。
最近の研究では、腸管は免疫機構に大変重要な役割を持っていることが、明らかになってきました。経腸栄養法は、安価で管理しやすいという利点がありますが、時に中止せざるを得ないこともあります。それは、消化器系の合併症を起こしたときです。その中で一番多いのは下痢です。経腸栄養を開始した直後に多く見られます。慢性期では逆に便秘に傾くことが多いようです。栄養剤の浸透圧の関係も下痢を起こしやすいのですが、注入速度とも関係しています。体が弱っている状態では、腸粘膜の萎縮があり、消化酵素の分泌不全も存在するため、最初はゆっくりと落とすことが肝要となります。
在宅医療4
脳梗塞による嚥下障害や認知症による摂食不良の栄養補給には、経静脈による点滴が一般的です。しかし長期間となると、感染の問題から難しいことがしばしばあります。そこで、体に管を入れて栄養剤を注入する方法が、より効果的と考えられるようになりました。お腹から直接胃に管を入れる方法が、胃瘻と呼ばれる栄養法です。この胃瘻は、胃内視鏡を用いてお腹に穴をあけて作ります。術後間もないときの自己抜去や自然抜去に注意したいものです。スキントラブル、汚れ、つまりはありますが、長い目で見ると非常に利点のあるものです。寝たきりの患者さんの栄養管理は、病院から自宅療法へスイッチする時のひとつの山でしたが、経腸栄養剤(成分栄養剤)・胃瘻の出現で、飛躍的に進歩したといっても過言ではないでしょう。次号へ続きます。
在宅医療3
病院に入院する患者さんの退院の目安の一つに、食欲があげられます。一般的に、普通食が全量摂取可能なら退院も近いでしょう。しかし、中には経口摂取できない方もいらっしゃり、月単位の入院になると家が恋しくなります。20年も前は鎖骨から入れる点滴、いわゆる高カロリー輸液をしている人を一時的に家に帰宅させるのも結構大変でした。感染しないだろうか? 交換はうまくいくだろうか? 気苦労で疲れたものです。ましてや鼻を通し胃管から流動食を入れている患者さんは更に大変でした。自己抜去すると即病院へ逆戻りです。長い間寝たきりで経口摂取できない患者さんを自宅に戻せるようにするには、今は胃瘻といって直接お腹に穴をあけ胃に管を取り付ける方法があります。この方法なら誤嚥もありません。自己抜去できない工夫もなされています。続く。
在宅医療2
今から15年以上前、老人病院で、社会的入院が問題になっていました。これは、家族が仕事の多忙や住宅事情の理由で、日頃、患者さんの面倒をみることができないため、一時的に入院させるという状態です。すべての患者さんではありませんが、一部にみられたことは確かでした。そのため、この社会的入院をやめ、受け入れ先の施設を充実させようというのが現在の動きです。しかしながら、高齢者の状態は急変しやすいものです。必要な入院さえも制限されるようになると、現場で働く私どもは困惑してしまいます。私が以前勤務していた病院では、30年以上入院していた方もいらっしゃり、転院されてから1年後に亡くなったという噂を聞きました。人間は環境の変化にはつくづく弱いものです。そこで、一部は自宅に戻って療養、介護をしようというのが、在宅医療なのです。
在宅医療
今から30年ほど前まで田舎では、自宅で出産や最期を迎えることは極々当たり前でした。昔の日本映画などを見ると、医者が患者宅に往診して畳の部屋で布団に寝ている患者の最期を看取り「ご臨終です」という場面がよく出てきます。まさにあの映画のワンシーンそのものが、つい最近まで行われていました。
それが、交通機関の発達とともに、遠方の病院まで受診することが可能になり、それに伴い入院して、病院で最期を迎えるのが一般的になってきました。
しかし近年、再度、在宅医療が見直されています。理由は、医学知識のない一般の方にも安心して使用できる小型軽量化された医療機器が登場したことと、社会保障費の増大からです。自宅で病気を治療する在宅医療は、21世紀の医療を支える重要な位置になってきたのです。
インフルエンザの歴史3
インフルエンザウイルスは新しい型が出現すると古い型は駆逐されていくという性質があります。1977年に再びH1N1ウイルスが出現しました。ソ連風邪といわれ今日に至ります。このウイルスは1918年に流行したいわゆるスペイン風邪の末裔で1950年代迄続いたH1N1ウイルスと遺伝子型がそっくりでした。30年近く経過し再び出現したのです。ウイルスは形を変化させるため、同じ型が現れることは極めて稀なことです。これには諸説ありますが、人為的にサンプルが流出したためと今では考えられているそうです。それが今日に至るまで流行し続けているのです (河岡義裕:インフルエンザ危機)。実験中のウイルスの流出が世界中を恐怖に落とし入れるとは考えてみると恐ろしいことです。エボラ出血熱ウイルスなどがばら撒かれたらとんでもないことです。
インフルエンザの歴史2
インフルエンザウイルスはA、B、Cの3型がありますが、人に対して病原性を持つのはA及びB型です。H、Nは、ウイルスの主要抗原をあらわします。H抗原は15種類、N抗原は9種類、自然界に存在しています。
1918年に流行したH1N1スペイン風邪ウイルスは約40年間続き、'57年のH2N2アジア風邪ウイルスに置き換わりました。'68年にはH3N2 ホンコン風邪ウイルスが出現、現在は、このタイプと'76年に再復活したH1N1ソ連風邪ウイルスが流行しています。新型インフルエンザH5ウイルスの出現が心配されていますが、アジア風邪のH2N2抗原ウイルスは、30歳以下の人は免疫が無く、再び復活すると困ってしまいます。しかし、自然界では新型が出現すると、古い型はなぜか駆逐され入れ替わってしまうとされています。続きは次号へ。
インフルエンザの歴史
新年明けましておめでとうございます。昨年は例年になく、嘔吐下痢を伴う感染症が流行しました。これからの季節は、インフルエンザの動向に注意したいものです。
そもそもインフルエンザは日本でどのように流行したのでしょうか? 江戸時代には27回の流行があったそうです。そのほとんどが、西に位置する長崎から発生し、次第に中国、関東地方と、東へ流行していったのです。長崎は当時、唯一外国との貿易がありました。このことも、インフルエンザが外国からの伝染病と診断する根拠となるわけです (立川昭二・病と人間の文化史)。
200年以上経過した現在も、我々はこの病に悩まされています。ウイルス感染は一度発生すると、数百年ないし今は消滅した痘瘡のように1500年間も続くのです。まさに人類の歴史は病との闘いの歴史でもあるのです。
病院改革5
最近は電子カルテなるものが蔓延し、医療界も様変わりしてきました。将来、病院間をインターネットで結び情報を共有し、無駄をなくしていこうという主旨ですが、80歳にもなる私の父のようにコンピュータに触ったことがない医者は診療ができなくなる可能性があります。今、国全体が税収不足で、医療業界もその影響をもろに受けています。国民皆保険始まって以来の危機的状況です。今後、病院、医院の更なる合理化が迫られることでしょう。私達医者は生き残りをかけていかねばならないのです。
保険制度が浸透していない私が子どもの頃、近所の人がよく野菜を持ってきました。父が「ああ〜、いつもどうも」と、ありがたく受け取っていたのを記憶しています。今後そんな光景が見られないのは寂しい限りです。
医は仁術を忘れないようにしたいものです。
病院改革4
子は親を見て育つと昔から言います。小さい時などは親の苦労などはこれっぽっちも考えたことなどありません。しかし、結婚して子どもをもうけ育てていく過程で生きていくのがいかに大変かわかってきます。私は父親のもとから離れ、新天地で開業し今日に至ります。その間良いことも悪いことも含め様々な経験をしました。しかし、子どもの頃見た父親を未だに越すことが出来ません。車も使えない大雪の日の深夜、しんしんと降る静寂な雪の夜道を歩いて往診する姿、抗生剤のショックで事故があった時、パトカーから降りる父親の姿、医者は神様じゃないと患者に怒っていた記憶など、決して泣き言も言わず仕事をしていた姿は今も焼きついてます。怖い存在でしたが、父もそれなりに緊張していたのでしょう。私が経験した苦労などたいしたことが無いのかもと思えます。
病院改革3
今日の自分に影響を与えた子どもの頃の出来事があります。小学校1〜2年生の頃のある夕方、血だらけの子どもを抱えた母親が突然家に飛び込み「先生〜!先生〜!助けてください〜。車にはねられたんです」驚いて見ると子供は頭がぱっくりと割れて「痛いよ〜。痛いよ〜」と泣き叫んでいました。昔は脳外科専門の病院など無く紹介先の病院に着く前にその子は亡くなったそうです。時々今でも思い出します。この事件の前後「川でおぼれた子どもが引き上げられたので、すぐ来てくれ」と連絡が入り兄と私は父の車に同乗しました。私は怖くて川を渡ることができませんでしたが、一つ違いの兄は父と一緒に行きました。が、既におぼれた子どもは息を引き取っていました。数年後兄が同じ運命をたどるとは夢にも思いませんでした。40年も前のことですが忘れない出来事です。