院長のコラム

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在宅医療25

春、一年で一番うきうきとした気分になれる季節です。先月号でも触れましたが、私の父親が倒れ、現在多摩近郊の病院でリハビリを行っております。幸いなことに徐々に顔色も良くなり主治医や病院の看護師、リハビリの先生には感謝の気持ちでいっぱいです。

しかしながらこのリハビリも期間の制限があり、昔のように何年もということはできなくなりました。病院ではかなり回復したのに自宅に戻ったら、また寝たきりになってしまったという話はよく耳にします。医療費抑制政策の一環にて仕方がないと思いますが、何とも残念であります。あとは自己努力しかありません。

このリハビリが全国どこの病院でも受けられれば、日本の寝たきり患者さんは激減するでしょう。そのような国にすることが私たちの責務でもある、と私は思います。

在宅医療24

介護はされる側もする側も大変です。先月父親が倒れ、毎週埼玉の実家に帰っていました。疲労困憊してしまい、そのうちこちらも調子悪くなってしまい、ついには寝込んでしまいました。

「自宅で介護を」と国は勧めていますが、自宅での介護が辛うじて出来るのは、東京が様々な点で地方に比べて、進んでいるからかと思います。地方といっても東京から車で1時間半〜2時間の距離の所ですが、在宅療養にしてもリハビリにしても10年以上は遅れていると痛切に感じました。そのため、医者も「仕方がない」で終わってしまうのです。

リハビリを受ければ寝たきりにならないで済むかもしれない患者さんがいても、リハビリ病院がない、経済的に不可能ということでかなりの数の患者さんが、治るものも治らないのが、現状ではないでしょうか?

在宅医療23

寒さも本格的になってきました。空気も乾燥して、この原稿を書いている1月後半時点では、インフルエンザが大流行しています。また、タミフルが効かない耐性ウイルスも報告され、心配です。10年前くらいまでは、インフルエンザに罹った時は、ひたすら寝ていたものです。それが、学校や仕事があるので休めない等の理由で、タミフルを安易に使用した結果だと思います。冬になったら予防接種を受け、周囲に迷惑をかけないようにすることが大切なマナーです。手洗い・うがい・マスクが予防になると言いますが、私は診察室にいる時は、加湿器をつけてマスクを必ずしています。お陰様でインフルエンザの流行期に入っても、風邪一つひきません。マスクは大切なウイルス防御品です。患者さんのお宅に往診する時もマスクをして、迷惑をおかけしないように心がけています。

在宅医療22

新年あけましておめでとうございます。今年こそは明るい年にしたいものですね。

嘔吐を伴う感冒が流行っています。原因の一部はノロウイルスによる感染症です。昔、小型球形ウイルスといわれたもので生牡蠣からの感染が有名です。時に高齢者施設での大流行が起こり、毎年死亡者が出る等の甚大な被害が報告されています。一般的に数日間で回復しますが、寝たきりの患者さんにとって恐ろしい感染症となります。もし家族に下痢嘔吐が生じたら、高齢者には絶対に近寄らないことです。よく流水で手を洗い、吐物には触ってはなりません。

私が以前、乳幼児がよく罹るロタウイルス感染症に不注意で罹ってしまった時は、午前中トイレを往復。ついには点滴しながら診察した経験があります。子どもばかりではありません、大人もウイルスにはご注意下さい。

在宅医療21

本年も残すところ一ヶ月をきりました。寒さが増すのもこの時期ですね。

患者さん、特に在宅で療養中の方には感冒が一番の大敵です。介護をなさる方は、毎日患者さんの熱を計って、少しでも高ければ早めに主治医へ連絡して下さい。早期発見、早期治療が病の進行を抑えてくれます。また、風邪にかかったかなと思ったらマスク、手洗い、早めの投薬で患者さんにうつさないようにすることが重要です。

また一方で、ノロウイルスによる嘔吐下痢症の発生がみられます。寝たきりの患者さんにとって、嘔吐下痢は命取りになります。脱水にならないよう、水分補給は欠かさないようにして下さい。尿量が少ない時などは脱水があるのかもしれません。

最後に、インフルエンザワクチンを打つことも大切です。介護をなさる方もされる方も禁忌でなければお勧めします。

在宅医療20

本年も2ヶ月足らずとなりました。インフルエンザ予防接種はお済みですか? 特に呼吸器疾患をお持ちの患者さんは禁忌でない限り、積極的な接種をお勧め致します。

インフルエンザに罹らないようにするには、体力をつけるのも大切です。体力は栄養に左右されます。栄養摂取は、点滴で直接静脈内に栄養を投与する方法と、経腸栄養の2つの方法があります。末梢の血管から輸液を入れる場合、何度も同じ場所の血管を使用すると静脈炎を引き起こしやすいという難点がありますが、食欲のない方にはカロリーは低くても、だるさが取れ体は楽になるものです。子どもの場合、ぐったりしていても点滴が終わる頃には元気に帰っていく場合もあります。

体液のバランスを保つのは大変重要なことです。高齢者の方は、脱水になりやすく、点滴は大切な治療の一環になります。

在宅医療19

秋になり、ご自宅で療養されている患者さんにとって、大敵は感冒です。特に呼吸器疾患をお持ちの方は、11月中にインフルエンザワクチンを接種してください。

感冒の流行と共に食欲も落ちてくると、点滴が重要な役割を果たします。高齢で痩せている患者さんの場合、血管がもろくてすぐ液漏れしてしまい、点滴に30分〜1時間費やすことがあります。肥満で血管が出にくい方も同じです。ただし、これを毎日行うのは、大変な労力と時間を費やします。そんな時は、皮下輸液という、以前に一時やっていた方法があります。これはお腹、胸部などの、体動にあまり影響のない場所に直接針を刺し、時間をかけ、ゆっくりと点滴をする方法です。一時的に皮膚の膨隆、痛み、冷感を訴えることもありますが、徐々に吸収され、脱水を補うことができ、便利な治療法です。

在宅医療18

夏は、健常な人でも暑さで食欲が落ちるもので、病気で長期臥床されている患者さんはなおさらです。この食欲不振というのはしばしば医者を悩ませるものです。若い方なら点滴をしてしばらくすると回復の兆しをみますが、ご高齢者は低蛋白血症から浮腫を生じやすく、感染しやすくなります。そうなると抗生剤の投与も必要となってきます。したがって、ご高齢者の食欲不振と聞くとドキッといたします。そんな時は経腸栄養剤という手もありますが、その前に患者さんの嗜好をたずね、お好きなものを食べていただくことにしています。しかも、時間に関係なく食べたい時に食べていただき、少量ずつ試みてもらっています。消化の良いものは、例えば、おかゆ、うどん、雑炊、豆腐はもちろんですが、プリン、ゼリー、アイスクリーム、カキ氷なども食欲低下の時はお勧めです。

在宅医療17

癌末期になると痛みが強くなり、次第に苦痛を伴い、不眠が生じることがあります。このような時は、躊躇せず麻薬を用いることが大切です。しかしながら我が国の麻薬消費量は、最も消費の多い米国の1/50、フランスや英国の1/7と、先進国の中でも極端に少なくなっています (癌緩和ケアガイドブック)。このことからも、十分な緩和ケア、すなわち癌の痛みやそれに伴う様々な症状が十分にコントロールされてないことがわかります。その理由の一つとして、日本では緩和ケアの専門機関が少ないことがあげられます。英国ではがん患者の70%以上が緩和ケアを利用しているのに対し、日本では10%以下に過ぎません。では希望の療養場所は、痛みを伴う癌末期の患者さんの場合、約60%が自宅です。一方、自宅で最期を迎えたい人という人は、10%にとどまるようです。

在宅医療16

 褥瘡(じょくそう)は、寝たきり患者さんにしばしば遭遇する疾患です。できやすい場所は仙骨部ですが、背骨、足首など体重が加わるところならどこにできてもおかしくはありません。
 治療法は、消毒した潰瘍部分の壊死組織を外科的処置で取り除き、皮膚組織を再生させる薬を塗り、ガーゼで覆い、肉芽組織を再生させるのが一般的です。一方、ラップ療法は傷を消毒せず抗菌剤も使わず、ガーゼの代わりにラップを貼っておくだけの治療です。ラップは100円ショップでも売っている食品包装用の薄い透明なフィルムです。
 一般的にラップ療法が成功する為には全身状態の良い患者さんで、皮下脂肪の浅い方は不向きです。また、閉塞性動脈硬化症による踵の潰瘍には効果はありません。日常品を使うからといっても褥瘡の治療は必ず主治医の指示に従うことが重要です。

在宅医療14

在宅医療でしばしば遭遇する病気は、感染です。上部気道、下部尿路感染が一般的です。また、寝たきりの患者さんでは、褥瘡もよく見られます。一番知られている場所は仙骨部位ですが、時に背骨の突出部位や足の踵部分にも生じます。
そもそも、この褥瘡はどうしてできるのでしょうか? 私達は同じ姿勢を保っていると、その部位に痛みを感じるため姿勢を変えます。寝ている場合は無意識のうちに寝返りをします。すなわち同じ姿勢を続けていると、ある部分にだけ圧力が加わる結果、血流が途絶え細胞の壊死を引き起こします。これが褥瘡です。
この褥瘡は、部位によっては2時間程で形成されるといわれています。最初皮膚表面は赤みが生じ、次第にびらん、潰瘍へと進行します。したがって、初期の赤みを見逃さないことが重要になります。

在宅医療13

食欲不振になると点滴がすぐ頭に浮かびます。さらに終末期には食欲が低下する傾向があります。
癌終末期患者で輸液群と非輸液群に分けて、精神症状及びライフクオリティーの変化を調べた研究があります。それによると、「眠気、幻覚などの精神症状は輸液群で改善したが、倦怠感やライフクオリティーの評価には差がなかった」ということです。
聖隷三方原病院緩和支持治療科部長の森田達也医師によると「終末期は精神状態が変化しやすい為、気分をはっきりしたい患者さんには輸液すべし」と指摘しています。そして「1000ml以下に輸液を抑えることによって腹水、胸水、浮腫は悪化しない傾向にある」という論文を出しています。往診では、少量の点滴は拘束時間を考えると、患者さんはもちろん医療従事者にも助かります。まさしく諸刃の剣ですね。

在宅医療12

癌性疼痛は癌患者さんの日常生活を著しく低下させます。したがって、疼痛コントロールは質の高い生活維持のため大変重要な位置を占めます。その目標としては、まず睡眠が十分とれるか、一部の癌を除いて食事摂取が可能かどうか、入浴、外出可能かなどです。痛みは我慢しないことが大切です。特に、睡眠は健康維持のために重要です。睡眠不足ですと、頭がボーっとして物事に集中できません。また、免疫力も落ちて風邪をひきやすくなります。常に病床の患者さんはなおさらです。昼間はばたばたと騒がしく、生活音が聞こえるため安心して寝てしまうことも多い半面、夜間は刺激が全くか極端に減るため、むしろ頭がさえて不眠を訴えることがあります。よく病院でナースコールを頻回に鳴らす患者さんにもこのようなケースがあります。麻薬による除痛が大切になります。

在宅医療11

進行がん患者さんでは、約7割に疼痛が存在するといわれています。
WHOの三段階除痛ラダーに従うと、第一段階では非オピオイド系鎮痛薬すなわちアセトアミノフェンのような非ステロイド系鎮痛消炎剤、効果が得られない場合は、第二段階で弱オピオイド鎮痛剤が用いられます。代表的薬剤にリン酸コデインがあります。一般に咳止めとして広く使用されていますが、便秘傾向になる為、便秘薬を併用することもしばしばです。1日4〜6回と頻回投与の為、最近ではオキシコドンといわれるオピオイドも使用されています。以上の段階を経ても痛みが持続する時は、強い鎮痛効果のある強オピオイド鎮痛剤、いわゆるモルヒネを使用します。モルヒネは癌疼痛を激減させてくれます。経口摂取が不可能な場合は坐薬、経皮吸収も可能なパッチを使用することもあります。

在宅医療10

新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。
さて、在宅患者さんを往診して感じることは、ご家族の方の並々ならぬ努力に頭が下がるということです。特に末期がん患者さんは夜間も苦しくて眠れないことも多く、その都度家族は呼び起こされます。それが毎日続くのですから、体力的にも精神的にも参ってしまいます。時に不幸にも共倒れということもありえます。介護者が若い方でも、がん患者さんのケアは2〜3週間が限界ではないでしょうか? 主婦の場合は、食事の世話、買い物、掃除、子どもの面倒等々で、猫の手も借りたいくらいでしょう。
在宅医療は医者、看護師、薬剤師、ヘルパー等が互いに分散して患者さんを支えます。一人で抱え込むと大変ですので、ご自宅で最期を迎えさせてあげたいとお思いでしたら先ずはお電話下さい。

在宅医療9

 早いもので残り1ヶ月で本年も終わりですね。さて往診の話ですが、寝たきりのご高齢の方は様々な病気をお持ちのため、経験を積まないとしばし苦慮する場面に遭遇します。特に専門外は頭を悩ませるため、情報集めは大切な治療の一環になります。往診の内容は、尿道カテーテル、気管内カテーテル、胃ろうチューブ交換、栄養管理と病院で日々行われていることをご自宅で施行します。
 在宅医療のもう一つ大切な仕事が、がん患者さんや他の病で末期の方の最期の看取りです。この最期の看取りですが、医師が死亡確認しないとそれ以上事が進みません。「お葬式をすぐに出さなければ…」と動揺し心配されるお気持ちはわかりますが、それは無理なのです。したがって、死亡確認は医師の重要な仕事の一つになります。
 それでは、来年もよろしくお願いいたします。

在宅医療8

 在宅での寝たきり高齢者にとって、冬は油断できません。感冒、インフルエンザ等は、免疫力が低下している方には命取りにもなります。家族の方は積極的にインフルエンザワクチンを打ち、自宅にウイルスを持ち込まないようにしなければなりません。
 ご家庭での対策として、まず外出したら必ず手洗いとうがいをして下さい。それから大切なのは、部屋を温め、乾燥を防ぐことです。窓際はカーテンだけでは寒く、特に北側の部屋で寝ている高齢者は、今から窓際から離れたところで看病されたほうがよろしいでしょう。
 ワクチンは、65歳以上の人、呼吸器、循環器系、慢性腎疾患を有する人、老人施設入所者は積極的に打たねばなりません。もちろん私達医療従事者、老人施設の従業員、在宅看護に従事する方、またその同居家族等も例外ではありません。

在宅医療7

寝たきり老人、特に80歳以上の超高齢者の場合は感冒、脱水、わずかな水分過剰等でも変化をきたしやすいのが一つの特徴です。そのため早期発見が重要となってきます。すでに意識レベルが低下している場合でも呼吸回数、体温、脈数、尿量によってもその変化に気づくものです。顔色は良いか、笑顔が見られるか、触ってみて皮膚の状態の変化、特に下腿にむくみがあるかどうか、舌は乾燥していないか等、毎日観察するよう心掛ければ医療従事者でなくとも早期に異常を発見できます。時々、私が気がつかないような小さな変化を指摘されるご家族がいらっしゃいます。長くお世話をしているためでしょうか、いつもと様子がおかしいなどといわれ実際にそのとおりだったということもしばしばあります。まさに経験と勘があたることが多いのです。

在宅医療6

 高齢者、特に寝たきりになると、一人の患者さんに様々な病気が存在していることが多いです。特に、長期臥床ともなると消化管疾患では食欲低下を引き起こしやすく、便秘はかなりの頻度に見られます。その上、嚥下運動も低下して食物がつまりやすくなります。そのため食事を控えたり流動食へ変更になり、低カロリーが続く結果しばしば低栄養状態に陥ります。低栄養状態は免疫状態が低下しやすく、感染、創傷遅延が生じます。このように変化が著しいのも寝たきり高齢者の特徴です。
 脱水にも注意が必要です。暑い時はアイスノンを使用して体温が上昇しないよう注意し、こまめに冷水をのむことが大切です。また、利尿剤を使用中の患者さん、心不全、腎臓病で塩分制限中の患者さんは低ナトリウム血症に注意したいものです。続きは次号で話します。

在宅医療5

 私たちは、口を介して食物を体内に取り込んでいます。仮に寝たきりになったとしても、点滴で栄養を取るより、腸管を介する栄養摂取方法がより生理的といえましょう。
 最近の研究では、腸管は免疫機構に大変重要な役割を持っていることが、明らかになってきました。経腸栄養法は、安価で管理しやすいという利点がありますが、時に中止せざるを得ないこともあります。それは、消化器系の合併症を起こしたときです。その中で一番多いのは下痢です。経腸栄養を開始した直後に多く見られます。慢性期では逆に便秘に傾くことが多いようです。栄養剤の浸透圧の関係も下痢を起こしやすいのですが、注入速度とも関係しています。体が弱っている状態では、腸粘膜の萎縮があり、消化酵素の分泌不全も存在するため、最初はゆっくりと落とすことが肝要となります。

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