院長のコラム

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在宅医療11

進行がん患者さんでは、約7割に疼痛が存在するといわれています。
WHOの三段階除痛ラダーに従うと、第一段階では非オピオイド系鎮痛薬すなわちアセトアミノフェンのような非ステロイド系鎮痛消炎剤、効果が得られない場合は、第二段階で弱オピオイド鎮痛剤が用いられます。代表的薬剤にリン酸コデインがあります。一般に咳止めとして広く使用されていますが、便秘傾向になる為、便秘薬を併用することもしばしばです。1日4〜6回と頻回投与の為、最近ではオキシコドンといわれるオピオイドも使用されています。以上の段階を経ても痛みが持続する時は、強い鎮痛効果のある強オピオイド鎮痛剤、いわゆるモルヒネを使用します。モルヒネは癌疼痛を激減させてくれます。経口摂取が不可能な場合は坐薬、経皮吸収も可能なパッチを使用することもあります。

在宅医療10

新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。
さて、在宅患者さんを往診して感じることは、ご家族の方の並々ならぬ努力に頭が下がるということです。特に末期がん患者さんは夜間も苦しくて眠れないことも多く、その都度家族は呼び起こされます。それが毎日続くのですから、体力的にも精神的にも参ってしまいます。時に不幸にも共倒れということもありえます。介護者が若い方でも、がん患者さんのケアは2〜3週間が限界ではないでしょうか? 主婦の場合は、食事の世話、買い物、掃除、子どもの面倒等々で、猫の手も借りたいくらいでしょう。
在宅医療は医者、看護師、薬剤師、ヘルパー等が互いに分散して患者さんを支えます。一人で抱え込むと大変ですので、ご自宅で最期を迎えさせてあげたいとお思いでしたら先ずはお電話下さい。

在宅医療9

 早いもので残り1ヶ月で本年も終わりですね。さて往診の話ですが、寝たきりのご高齢の方は様々な病気をお持ちのため、経験を積まないとしばし苦慮する場面に遭遇します。特に専門外は頭を悩ませるため、情報集めは大切な治療の一環になります。往診の内容は、尿道カテーテル、気管内カテーテル、胃ろうチューブ交換、栄養管理と病院で日々行われていることをご自宅で施行します。
 在宅医療のもう一つ大切な仕事が、がん患者さんや他の病で末期の方の最期の看取りです。この最期の看取りですが、医師が死亡確認しないとそれ以上事が進みません。「お葬式をすぐに出さなければ…」と動揺し心配されるお気持ちはわかりますが、それは無理なのです。したがって、死亡確認は医師の重要な仕事の一つになります。
 それでは、来年もよろしくお願いいたします。

在宅医療8

 在宅での寝たきり高齢者にとって、冬は油断できません。感冒、インフルエンザ等は、免疫力が低下している方には命取りにもなります。家族の方は積極的にインフルエンザワクチンを打ち、自宅にウイルスを持ち込まないようにしなければなりません。
 ご家庭での対策として、まず外出したら必ず手洗いとうがいをして下さい。それから大切なのは、部屋を温め、乾燥を防ぐことです。窓際はカーテンだけでは寒く、特に北側の部屋で寝ている高齢者は、今から窓際から離れたところで看病されたほうがよろしいでしょう。
 ワクチンは、65歳以上の人、呼吸器、循環器系、慢性腎疾患を有する人、老人施設入所者は積極的に打たねばなりません。もちろん私達医療従事者、老人施設の従業員、在宅看護に従事する方、またその同居家族等も例外ではありません。

在宅医療7

寝たきり老人、特に80歳以上の超高齢者の場合は感冒、脱水、わずかな水分過剰等でも変化をきたしやすいのが一つの特徴です。そのため早期発見が重要となってきます。すでに意識レベルが低下している場合でも呼吸回数、体温、脈数、尿量によってもその変化に気づくものです。顔色は良いか、笑顔が見られるか、触ってみて皮膚の状態の変化、特に下腿にむくみがあるかどうか、舌は乾燥していないか等、毎日観察するよう心掛ければ医療従事者でなくとも早期に異常を発見できます。時々、私が気がつかないような小さな変化を指摘されるご家族がいらっしゃいます。長くお世話をしているためでしょうか、いつもと様子がおかしいなどといわれ実際にそのとおりだったということもしばしばあります。まさに経験と勘があたることが多いのです。

在宅医療6

 高齢者、特に寝たきりになると、一人の患者さんに様々な病気が存在していることが多いです。特に、長期臥床ともなると消化管疾患では食欲低下を引き起こしやすく、便秘はかなりの頻度に見られます。その上、嚥下運動も低下して食物がつまりやすくなります。そのため食事を控えたり流動食へ変更になり、低カロリーが続く結果しばしば低栄養状態に陥ります。低栄養状態は免疫状態が低下しやすく、感染、創傷遅延が生じます。このように変化が著しいのも寝たきり高齢者の特徴です。
 脱水にも注意が必要です。暑い時はアイスノンを使用して体温が上昇しないよう注意し、こまめに冷水をのむことが大切です。また、利尿剤を使用中の患者さん、心不全、腎臓病で塩分制限中の患者さんは低ナトリウム血症に注意したいものです。続きは次号で話します。

在宅医療5

 私たちは、口を介して食物を体内に取り込んでいます。仮に寝たきりになったとしても、点滴で栄養を取るより、腸管を介する栄養摂取方法がより生理的といえましょう。
 最近の研究では、腸管は免疫機構に大変重要な役割を持っていることが、明らかになってきました。経腸栄養法は、安価で管理しやすいという利点がありますが、時に中止せざるを得ないこともあります。それは、消化器系の合併症を起こしたときです。その中で一番多いのは下痢です。経腸栄養を開始した直後に多く見られます。慢性期では逆に便秘に傾くことが多いようです。栄養剤の浸透圧の関係も下痢を起こしやすいのですが、注入速度とも関係しています。体が弱っている状態では、腸粘膜の萎縮があり、消化酵素の分泌不全も存在するため、最初はゆっくりと落とすことが肝要となります。

在宅医療4

脳梗塞による嚥下障害や認知症による摂食不良の栄養補給には、経静脈による点滴が一般的です。しかし長期間となると、感染の問題から難しいことがしばしばあります。そこで、体に管を入れて栄養剤を注入する方法が、より効果的と考えられるようになりました。お腹から直接胃に管を入れる方法が、胃瘻と呼ばれる栄養法です。この胃瘻は、胃内視鏡を用いてお腹に穴をあけて作ります。術後間もないときの自己抜去や自然抜去に注意したいものです。スキントラブル、汚れ、つまりはありますが、長い目で見ると非常に利点のあるものです。寝たきりの患者さんの栄養管理は、病院から自宅療法へスイッチする時のひとつの山でしたが、経腸栄養剤(成分栄養剤)・胃瘻の出現で、飛躍的に進歩したといっても過言ではないでしょう。次号へ続きます。

在宅医療3

病院に入院する患者さんの退院の目安の一つに、食欲があげられます。一般的に、普通食が全量摂取可能なら退院も近いでしょう。しかし、中には経口摂取できない方もいらっしゃり、月単位の入院になると家が恋しくなります。20年も前は鎖骨から入れる点滴、いわゆる高カロリー輸液をしている人を一時的に家に帰宅させるのも結構大変でした。感染しないだろうか? 交換はうまくいくだろうか? 気苦労で疲れたものです。ましてや鼻を通し胃管から流動食を入れている患者さんは更に大変でした。自己抜去すると即病院へ逆戻りです。長い間寝たきりで経口摂取できない患者さんを自宅に戻せるようにするには、今は胃瘻といって直接お腹に穴をあけ胃に管を取り付ける方法があります。この方法なら誤嚥もありません。自己抜去できない工夫もなされています。続く。

在宅医療2

今から15年以上前、老人病院で、社会的入院が問題になっていました。これは、家族が仕事の多忙や住宅事情の理由で、日頃、患者さんの面倒をみることができないため、一時的に入院させるという状態です。すべての患者さんではありませんが、一部にみられたことは確かでした。そのため、この社会的入院をやめ、受け入れ先の施設を充実させようというのが現在の動きです。しかしながら、高齢者の状態は急変しやすいものです。必要な入院さえも制限されるようになると、現場で働く私どもは困惑してしまいます。私が以前勤務していた病院では、30年以上入院していた方もいらっしゃり、転院されてから1年後に亡くなったという噂を聞きました。人間は環境の変化にはつくづく弱いものです。そこで、一部は自宅に戻って療養、介護をしようというのが、在宅医療なのです。

在宅医療

 今から30年ほど前まで田舎では、自宅で出産や最期を迎えることは極々当たり前でした。昔の日本映画などを見ると、医者が患者宅に往診して畳の部屋で布団に寝ている患者の最期を看取り「ご臨終です」という場面がよく出てきます。まさにあの映画のワンシーンそのものが、つい最近まで行われていました。
 それが、交通機関の発達とともに、遠方の病院まで受診することが可能になり、それに伴い入院して、病院で最期を迎えるのが一般的になってきました。
 しかし近年、再度、在宅医療が見直されています。理由は、医学知識のない一般の方にも安心して使用できる小型軽量化された医療機器が登場したことと、社会保障費の増大からです。自宅で病気を治療する在宅医療は、21世紀の医療を支える重要な位置になってきたのです。

インフルエンザの歴史3

インフルエンザウイルスは新しい型が出現すると古い型は駆逐されていくという性質があります。1977年に再びH1N1ウイルスが出現しました。ソ連風邪といわれ今日に至ります。このウイルスは1918年に流行したいわゆるスペイン風邪の末裔で1950年代迄続いたH1N1ウイルスと遺伝子型がそっくりでした。30年近く経過し再び出現したのです。ウイルスは形を変化させるため、同じ型が現れることは極めて稀なことです。これには諸説ありますが、人為的にサンプルが流出したためと今では考えられているそうです。それが今日に至るまで流行し続けているのです (河岡義裕:インフルエンザ危機)。実験中のウイルスの流出が世界中を恐怖に落とし入れるとは考えてみると恐ろしいことです。エボラ出血熱ウイルスなどがばら撒かれたらとんでもないことです。

インフルエンザの歴史2

 インフルエンザウイルスはA、B、Cの3型がありますが、人に対して病原性を持つのはA及びB型です。H、Nは、ウイルスの主要抗原をあらわします。H抗原は15種類、N抗原は9種類、自然界に存在しています。
 1918年に流行したH1N1スペイン風邪ウイルスは約40年間続き、'57年のH2N2アジア風邪ウイルスに置き換わりました。'68年にはH3N2 ホンコン風邪ウイルスが出現、現在は、このタイプと'76年に再復活したH1N1ソ連風邪ウイルスが流行しています。新型インフルエンザH5ウイルスの出現が心配されていますが、アジア風邪のH2N2抗原ウイルスは、30歳以下の人は免疫が無く、再び復活すると困ってしまいます。しかし、自然界では新型が出現すると、古い型はなぜか駆逐され入れ替わってしまうとされています。続きは次号へ。

インフルエンザの歴史

 新年明けましておめでとうございます。昨年は例年になく、嘔吐下痢を伴う感染症が流行しました。これからの季節は、インフルエンザの動向に注意したいものです。
 そもそもインフルエンザは日本でどのように流行したのでしょうか? 江戸時代には27回の流行があったそうです。そのほとんどが、西に位置する長崎から発生し、次第に中国、関東地方と、東へ流行していったのです。長崎は当時、唯一外国との貿易がありました。このことも、インフルエンザが外国からの伝染病と診断する根拠となるわけです (立川昭二・病と人間の文化史)。
 200年以上経過した現在も、我々はこの病に悩まされています。ウイルス感染は一度発生すると、数百年ないし今は消滅した痘瘡のように1500年間も続くのです。まさに人類の歴史は病との闘いの歴史でもあるのです。

病院改革5

 最近は電子カルテなるものが蔓延し、医療界も様変わりしてきました。将来、病院間をインターネットで結び情報を共有し、無駄をなくしていこうという主旨ですが、80歳にもなる私の父のようにコンピュータに触ったことがない医者は診療ができなくなる可能性があります。今、国全体が税収不足で、医療業界もその影響をもろに受けています。国民皆保険始まって以来の危機的状況です。今後、病院、医院の更なる合理化が迫られることでしょう。私達医者は生き残りをかけていかねばならないのです。
 保険制度が浸透していない私が子どもの頃、近所の人がよく野菜を持ってきました。父が「ああ〜、いつもどうも」と、ありがたく受け取っていたのを記憶しています。今後そんな光景が見られないのは寂しい限りです。
 医は仁術を忘れないようにしたいものです。

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