院長のコラム

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在宅医療17

癌末期になると痛みが強くなり、次第に苦痛を伴い、不眠が生じることがあります。このような時は、躊躇せず麻薬を用いることが大切です。しかしながら我が国の麻薬消費量は、最も消費の多い米国の1/50、フランスや英国の1/7と、先進国の中でも極端に少なくなっています (癌緩和ケアガイドブック)。このことからも、十分な緩和ケア、すなわち癌の痛みやそれに伴う様々な症状が十分にコントロールされてないことがわかります。その理由の一つとして、日本では緩和ケアの専門機関が少ないことがあげられます。英国ではがん患者の70%以上が緩和ケアを利用しているのに対し、日本では10%以下に過ぎません。では希望の療養場所は、痛みを伴う癌末期の患者さんの場合、約60%が自宅です。一方、自宅で最期を迎えたい人という人は、10%にとどまるようです。

在宅医療16

 褥瘡(じょくそう)は、寝たきり患者さんにしばしば遭遇する疾患です。できやすい場所は仙骨部ですが、背骨、足首など体重が加わるところならどこにできてもおかしくはありません。
 治療法は、消毒した潰瘍部分の壊死組織を外科的処置で取り除き、皮膚組織を再生させる薬を塗り、ガーゼで覆い、肉芽組織を再生させるのが一般的です。一方、ラップ療法は傷を消毒せず抗菌剤も使わず、ガーゼの代わりにラップを貼っておくだけの治療です。ラップは100円ショップでも売っている食品包装用の薄い透明なフィルムです。
 一般的にラップ療法が成功する為には全身状態の良い患者さんで、皮下脂肪の浅い方は不向きです。また、閉塞性動脈硬化症による踵の潰瘍には効果はありません。日常品を使うからといっても褥瘡の治療は必ず主治医の指示に従うことが重要です。

在宅医療14

在宅医療でしばしば遭遇する病気は、感染です。上部気道、下部尿路感染が一般的です。また、寝たきりの患者さんでは、褥瘡もよく見られます。一番知られている場所は仙骨部位ですが、時に背骨の突出部位や足の踵部分にも生じます。
そもそも、この褥瘡はどうしてできるのでしょうか? 私達は同じ姿勢を保っていると、その部位に痛みを感じるため姿勢を変えます。寝ている場合は無意識のうちに寝返りをします。すなわち同じ姿勢を続けていると、ある部分にだけ圧力が加わる結果、血流が途絶え細胞の壊死を引き起こします。これが褥瘡です。
この褥瘡は、部位によっては2時間程で形成されるといわれています。最初皮膚表面は赤みが生じ、次第にびらん、潰瘍へと進行します。したがって、初期の赤みを見逃さないことが重要になります。

在宅医療13

食欲不振になると点滴がすぐ頭に浮かびます。さらに終末期には食欲が低下する傾向があります。
癌終末期患者で輸液群と非輸液群に分けて、精神症状及びライフクオリティーの変化を調べた研究があります。それによると、「眠気、幻覚などの精神症状は輸液群で改善したが、倦怠感やライフクオリティーの評価には差がなかった」ということです。
聖隷三方原病院緩和支持治療科部長の森田達也医師によると「終末期は精神状態が変化しやすい為、気分をはっきりしたい患者さんには輸液すべし」と指摘しています。そして「1000ml以下に輸液を抑えることによって腹水、胸水、浮腫は悪化しない傾向にある」という論文を出しています。往診では、少量の点滴は拘束時間を考えると、患者さんはもちろん医療従事者にも助かります。まさしく諸刃の剣ですね。

在宅医療12

癌性疼痛は癌患者さんの日常生活を著しく低下させます。したがって、疼痛コントロールは質の高い生活維持のため大変重要な位置を占めます。その目標としては、まず睡眠が十分とれるか、一部の癌を除いて食事摂取が可能かどうか、入浴、外出可能かなどです。痛みは我慢しないことが大切です。特に、睡眠は健康維持のために重要です。睡眠不足ですと、頭がボーっとして物事に集中できません。また、免疫力も落ちて風邪をひきやすくなります。常に病床の患者さんはなおさらです。昼間はばたばたと騒がしく、生活音が聞こえるため安心して寝てしまうことも多い半面、夜間は刺激が全くか極端に減るため、むしろ頭がさえて不眠を訴えることがあります。よく病院でナースコールを頻回に鳴らす患者さんにもこのようなケースがあります。麻薬による除痛が大切になります。

在宅医療11

進行がん患者さんでは、約7割に疼痛が存在するといわれています。
WHOの三段階除痛ラダーに従うと、第一段階では非オピオイド系鎮痛薬すなわちアセトアミノフェンのような非ステロイド系鎮痛消炎剤、効果が得られない場合は、第二段階で弱オピオイド鎮痛剤が用いられます。代表的薬剤にリン酸コデインがあります。一般に咳止めとして広く使用されていますが、便秘傾向になる為、便秘薬を併用することもしばしばです。1日4〜6回と頻回投与の為、最近ではオキシコドンといわれるオピオイドも使用されています。以上の段階を経ても痛みが持続する時は、強い鎮痛効果のある強オピオイド鎮痛剤、いわゆるモルヒネを使用します。モルヒネは癌疼痛を激減させてくれます。経口摂取が不可能な場合は坐薬、経皮吸収も可能なパッチを使用することもあります。

在宅医療10

新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。
さて、在宅患者さんを往診して感じることは、ご家族の方の並々ならぬ努力に頭が下がるということです。特に末期がん患者さんは夜間も苦しくて眠れないことも多く、その都度家族は呼び起こされます。それが毎日続くのですから、体力的にも精神的にも参ってしまいます。時に不幸にも共倒れということもありえます。介護者が若い方でも、がん患者さんのケアは2〜3週間が限界ではないでしょうか? 主婦の場合は、食事の世話、買い物、掃除、子どもの面倒等々で、猫の手も借りたいくらいでしょう。
在宅医療は医者、看護師、薬剤師、ヘルパー等が互いに分散して患者さんを支えます。一人で抱え込むと大変ですので、ご自宅で最期を迎えさせてあげたいとお思いでしたら先ずはお電話下さい。

在宅医療9

 早いもので残り1ヶ月で本年も終わりですね。さて往診の話ですが、寝たきりのご高齢の方は様々な病気をお持ちのため、経験を積まないとしばし苦慮する場面に遭遇します。特に専門外は頭を悩ませるため、情報集めは大切な治療の一環になります。往診の内容は、尿道カテーテル、気管内カテーテル、胃ろうチューブ交換、栄養管理と病院で日々行われていることをご自宅で施行します。
 在宅医療のもう一つ大切な仕事が、がん患者さんや他の病で末期の方の最期の看取りです。この最期の看取りですが、医師が死亡確認しないとそれ以上事が進みません。「お葬式をすぐに出さなければ…」と動揺し心配されるお気持ちはわかりますが、それは無理なのです。したがって、死亡確認は医師の重要な仕事の一つになります。
 それでは、来年もよろしくお願いいたします。

在宅医療8

 在宅での寝たきり高齢者にとって、冬は油断できません。感冒、インフルエンザ等は、免疫力が低下している方には命取りにもなります。家族の方は積極的にインフルエンザワクチンを打ち、自宅にウイルスを持ち込まないようにしなければなりません。
 ご家庭での対策として、まず外出したら必ず手洗いとうがいをして下さい。それから大切なのは、部屋を温め、乾燥を防ぐことです。窓際はカーテンだけでは寒く、特に北側の部屋で寝ている高齢者は、今から窓際から離れたところで看病されたほうがよろしいでしょう。
 ワクチンは、65歳以上の人、呼吸器、循環器系、慢性腎疾患を有する人、老人施設入所者は積極的に打たねばなりません。もちろん私達医療従事者、老人施設の従業員、在宅看護に従事する方、またその同居家族等も例外ではありません。

在宅医療7

寝たきり老人、特に80歳以上の超高齢者の場合は感冒、脱水、わずかな水分過剰等でも変化をきたしやすいのが一つの特徴です。そのため早期発見が重要となってきます。すでに意識レベルが低下している場合でも呼吸回数、体温、脈数、尿量によってもその変化に気づくものです。顔色は良いか、笑顔が見られるか、触ってみて皮膚の状態の変化、特に下腿にむくみがあるかどうか、舌は乾燥していないか等、毎日観察するよう心掛ければ医療従事者でなくとも早期に異常を発見できます。時々、私が気がつかないような小さな変化を指摘されるご家族がいらっしゃいます。長くお世話をしているためでしょうか、いつもと様子がおかしいなどといわれ実際にそのとおりだったということもしばしばあります。まさに経験と勘があたることが多いのです。

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